「社会貢献ファーストのアントレプレナーを目指して」 -リアルテックファンド岩元颯オリビエ・高橋宏之×セルファイバ柳沢佑氏インタビュー対談 -


左:リアルテックファンド高橋宏之、中央:リアルテックファンド岩元颯オリビエ 、右:セルファイバ柳沢佑氏


 2020年よりリアルテックホールディングス株式会社(以下、リアルテック)に参画し、インターンシップとして投資育成や幅広い業務に従事してきた岩元颯オリビエ(以下、オリビエ)が、2022年3月末でリアルテックを卒業することになりました。

 オリビエがリアルテックで何を経験し、学んできたか。それを今後どう活かしていくのか。オリビエが初めて投資支援を経験し、大きな学びを得たセルファイバ株式会社(以下、セルファイバ)の代表取締役社長・柳沢佑氏と、セルファイバを共同担当したグロース・マネージャーである高橋宏之を交え、インタビュー対談を実施しました。



社会をより良くしたい、その想いが全ての原動力


オリビエは元Jリーガー。リアルテックにジョインしたきっかけを教えてください。


オリビエ

幼少期から両親に「誰かの役に立ちなさい、助けなさい」と言われて育ちました。オリビエという名前は国連の象徴の木であるオリーブが由来です。小学生の頃はメディアで地球温暖化が声高に叫ばれていて、学校の自由研究でアル・ゴアの『不都合な真実』を読み衝撃を受けました。世界には大きな課題が山積みだと感じましたし、子供ながらに「社会をより良くしたい」と強く思うようになりました。

平和を訴えるキング牧師やそれを歌で伝えるマイケル・ジャクソンのように、一番得意なサッカーで活躍することで、世界中に平和のメッセージを発信できるのではと考えました。だからこそ、自分がサッカーをやり切った結果、日本代表になれないと悟った時に、引退して、別の社会貢献の手段を模索する道を選びました。


そこからリアルテックにはどのように辿り着いたのですか。社会貢献の手段は沢山あると思いますが。


大学に通いながらスタートアップ系の人材紹介会社で働いていた頃、リサーチ業務の中でリアルテックという領域を知りました。その後、永田さん(リアルテック代表)のプレゼンを聞き、本当に日本の技術で世界が変えられるかもしれないと思うようになりました。そんな中、偶然にも永田さんへのインタビューに同行する機会を頂き、「売上が百倍になれば社会が百倍良くなる」という言葉を聞いて「リアルテック領域で勝負したい」と思い、永田さんにここで働かせて欲しいと直談判して、強引に足を踏み入れました(笑)。

場当たり的に思われるかもしれませんが、全ての進路選択は「社会をより良くしたい」という想いで一貫しているつもりですし、その気持ちが全ての原動力です。



確かな技術と強い想いで結ばれた絆


入社してから最初の数ヶ月は投資育成以外の仕事だったと思います。具体的な業務を教えて下さい。


オリビエ

新規案件発掘や各種リサーチ、ファンドレイズのための資料作成、記事執筆やSNS運営などの広報、その他バックオフィス業務など、幅広くやらせて頂きました。


入社時に何でもやります!と言っていた記憶がありますが、蓋を開けてみれば本当に何でもやっていましたね。投資業務は何件くらい担当して、どんな支援をしましたか。


オリビエ

メイン担当投資をセルファイバ含めて3件で、サブ担当投資を2件やらせて頂きました。支援内容は、事業計画の策定、SO(ストックオプション)の設計含む資本政策の作成、投資家や共同研究先の紹介、各種契約書の作成や会計業務等のバックオフィス支援などです。


投資家としての最初の仕事がセルファイバへの出資かと思いますが、そこに至る経緯を教えて頂けますか。


オリビエ

2019年のICCサミット・リアルテックカタパルトでセルファイバ代表の柳沢さんのプレゼンを聞いて本当に感動しました。ここは絶対に支援したいと思い、2020年にリアルテックで出資検討の話が出た時に迷わず手を挙げました。


■ ICC KYOTO 2019 記事

セルファイバは、“細胞エンジニアリング”で新時代の再生医療・細胞医療を実現する!



いつも堂々としているので学生だった事を忘れていました。検討から出資に至るまで数多く経験されましたね。高橋さんはセルファイバへの出資のタイミングからリアルテックメンバーに加入したかと思いますが、どのような経緯でしたか。


高橋

セルファイバは、2015年の創業直後からリアルテックメンバーでもある大坂さんが支援していました。リバネスが2017年に実施したテックプランターでは複数企業賞を受賞し、私も当時からその技術に大きな可能性を感じていました。今回、リアルテックが出資検討するタイミングで深く関与し、投資家としてデビューしました。私もオリビエも投資家としては素人でしたが、リアルテックメンバーの手厚い助言や支援のおかげで、チーム力で出資に至りました。


オリビエ

僕は今思えば、ベンチャー経営者と面談する時に、淡々と質問するようなところがあり、印象的にはちょっと怖いイメージを与えてしまっていたかもしれません。高橋さんは最初の面談から経営者の想いと技術についてひたすら聞いていました。ベンチャー経営者の皆さんは、自分達が大切にしている技術や人間的な部分に興味を持ってくれる事が嬉しいし、心を開いてくれる、というのを学びました。高橋さんはリバネスで研究や技術を社会実装する入口の仕掛け作りを長年手がけてきましたし、ライフサイエンス分野のスペシャリストでもあります。投資家としては初めてでも、ベンチャーのバリューアップのために何が大切かを理解して適切なコミュニケーションが取れるという意味で、見習うべき事が山ほどありました。


柳沢

投資家の方って、中にはベンチャーを1ポートフォリオや商品として見られている感じを受ける場合もあります。それがあからさまだと、経営者としては、その投資家に対してちょっと違うなと印象を思ってしまいます。実は私はリバネスの社員として高橋さんとも一緒に働いていました。研究者やベンチャー経営者の想いや技術を尊重する文化は、リバネスやリアルテックでは大事にされていて、常識的になっているようなところがありますね。


リバネスにいらしたんですか!?それがなぜセルファイバに?


柳沢

先ほど名前の出た大坂さんにセルファイバを紹介いただくなど、入社に至る経緯は色々ありましたが、一言で言えば、私もセルファイバの技術の可能性に惚れ込みました。リアルテックさんに出資頂いたのは2020年9月でしたが、リバネスとリアルテックの両方に長い間ずっと支援されている感覚ですね。


高橋

私は技術に興味が持てなかったら担当はできません。長く付き合っていく以上はパーソナリティを理解する必要がありますし、本気でやりたいと思っているかどうかは大事だと思っています。とは言え、私は投資は最初手探りでしたが、オリビエがとにかく必死で学んでいるのを見て自分も懸命に学びました。オリビエは、一緒にやり始めた時より遥かに知識を高めているし、ベンチャーへの質問を聞いていても、多角的な視点で物事を見られるようになっていたりする。誠実に努力して全力で臨んでくれるので、オリビエと一緒にやれば何事も前に進められるような信頼感があります。


柳沢

私もオリビエさんにはそういう印象があります。過去の経験の厚みがあるのかと思っていましたが、経験値やポジションを超えて物凄く腹が据わっているというか、しっかりやってくれそうな期待を抱かせてくれます。普通は年齢やポジション的に自信の無い感じが出たり、エクスキューズ付けそうなところを、明確に答えてくれる。実態は

どうなっていて、不確定の要素もあるけど、僕らはチームとしてここまでやりきりますと言って、実際にやってくれる。

正直言うと会社が大変な時期もあったのですが、心から応援してもらっている感覚もありましたし、不思議な安心感もあったので、全て包み隠さず相談しながら色々助けてもらいました。やっぱりそういう人と一緒に仕事をするのは気持ちがいいし、本当に楽しかったですね。



どんな肩書になっても、誰よりもアントレプレナーでありたい


ここまでのお話を聞く限り、投資する側とされる側という関係性を超えて、皆さんが強い信頼関係で結ばれている感じがしますね。


オリビエ

確かに大事な部分で繋がっていたと思います。ただ、僕のグロースマネージャーとしてやるべき事はもっとあったと思います。広く浅い支援の枠を抜け出せなかったなと。

仰って頂いた印象と反対の事を言うようですが、僕の中ではやはりVCとベンチャー企業、投資家と発行体という観念が抜け切れていなかったんだと思います。セルファイバの名刺を持って、自分でお金を集めて、研究パートナーを見つけて、人を採用して、売上を立てる、そういうコミットがもっとできたはず。具体的な行動じゃなくても、相手のバリューアップを本気で考えてアドバイスやフィードバックができていたのかを振り返ると、十分にできていなかったと思います。

それを最初に実感したのは丸さん(リアルテック共同代表)と出資依頼を受けたベンチャー企業との面談に同席した時に、丸さんはその案件に投資するしないに関わらず、こうすればいいんじゃないか、ああすればもっと良くなるんじゃないか、と色々なアイデアをぶつけていました。チームや技術の実態が見えにくい所から、少しでも売上を上げて社会実装に近づけていく力強さを目の当たりにしました。それを見て僕は、自分で起業するだけがアントレプレナーじゃないと感じましたし、そのベンチャーの技術で世の中が良くなると本気で信じるのであれば、自分自身がその社会実装のために果たせる役割を全力で果たすべきだと思いました。


昨年の合宿で決めたリアルテックの行動指針に、「すべては地球と人類の課題解決のために」「頼り頼られチームの力を束ねる」「誰よりもアントレプレナーであれ」という三本柱がありますよね。まさにこの三つ目と重なる話だと感じました。


オリビエ

はい、まさに合宿の時に永田さんが言ってくれた「みんなにはアントレプレナーよりもアントレプレナーであって欲しい」という言葉が元になっていると思いますが、それを聞いた時にも、自らがベンチャーを最もグロースさせるための行動を取らなければと改めて気付かされました。


次のキャリアとして、いわゆる起業家にならないのは、そうした考えも関係しているのですか。


オリビエ

これまでのキャリアも「自分がやる事で社会が良くなるかどうか」という基準で選択してきたつもりです。なので、自分自身が前に立って先頭を走る事によって確かに社会が良くなると確信できれば、きっと起業家になると思います。

ただ今は、価値ある技術シーズを持つ人たちにフルコミットで伴走しながら、価値をさらに押し上げて行く方が世の中が良くなる実感があるので、あまり自分自身が起業するかしないかには拘っていないんですよね。社会をより良くするために、今の自分にどんな力が必要で、一歩前に進むためにはどうしたらいいかを考えて進路を選択しているつもりです。


聞けば聞くほど、リアルテックに残ってグロースマネージャーを続けるのがベストではないかと感じますが(笑)。なぜ投資銀行を選んだのでしょう。


その選択も正解かもしれません。ただ、これまで高橋さんや他のリアルテックメンバーたちと仕事をする中で、確かな知識や専門性で貢献している姿や、様々な視点からベンチャーの価値向上のために提案する姿を目の当たりにして、あらゆる点で自分自身の成長の必要性を痛感しました。

先頭を走る起業家を心からリスペクトしながら、多角的な視点と確かな専門性で彼らに貢献して、自ら売上を作り出して社会実装と課題解決に貢献する、そんな自分自身のこれからの働き方を想像した時に、リアルテックに残ること以外にも選択肢がありました。

一方で、リアルテックに入らなければその選択肢さえも無かったと思いますし、ここでの経験は何にも変えがたい、本当にかけがえのないものです。

考えてみれば、「社会をより良くする」という僕のセルフ・パーパスと、リアルテックの目的である「地球と人類の課題解決に貢献する」は同じ意味ですよね。今のタイミングで最善の道を選んだと思っていますが、僕はリアルテックを離れても、リアルテックの社会実装を目指すアントレプレナーの一人だと思っていますし、あり続けたいと思っています。


永田さんも「リアルテックを通過した仲間は一生仲間だ」と言っていましたね。リアルテックのメンバー全員が同じ想いです。最後に高橋さんと柳沢さんから、オリビエに門出の祝福とこれからの期待を込めたメッセージをお願いします。


高橋

オリビエはリアルテックで大活躍していたし、みんなから信頼されていたので、同じ組織のメンバーとして働けなくなるのは本当に残念です。でもオリビエが言う通り、リアルテックで働く事だけがリアルテックの目的へ近づく事とは限らないし、新しいキャリアの中で、リアルテックの価値観や想いを広げて仲間を増やしてもらいたいです。

私が普段話している研究者や研究開発型ベンチャーの経営者たちは、確かな技術や開発力を持っていても、経営や資金調達をどうしたら良いか分からないという方が多いです。立場は違えど、オリビエにはこれからもリアルテック領域を支援してもらえると嬉しいし、価値あるシードを育てる作業をまた一緒にやりたいですね。


柳沢

世間一般ではなかなか理解しにくい領域の技術と私たちの想いを信じてくれて、本当に感謝しています。私も勝手に、これからも何かしらの形で一緒に仕事ができると期待していますし、離れていくような感覚は不思議と無いのですが、ひとまず、これまで本当にありがとうございました。

確かな自分軸を持ったオリビエさんだからこそ、人にも技術にも真っ直ぐに向き合えるんだろうと思いますし、これからどんな肩書になっても、更なる進化を遂げて社会貢献してくれると確信しています。

人やお金が沢山動いているところの蛇口をひねって、リアルテック領域に流れるお金や支援の流れをドバーッと十倍くらいにしてもらいたいですね。リアルテック領域への間口を開けて、それが次の時代の扉を開いて、結果として正しい人に優秀な人材やお金が流れれば、それ自体も立派な社会的インパクトですよね。


オリビエ

こちらこそ本当にありがとうございました。次のフェーズでもリアルテックの精神とアントレプレナーシップを忘れずに、しっかり力を付けて、また皆さんとご一緒できたらと思います。


またこのメンバーでお会いしましょう。ありがとうございました。



リアルテックのビジョンに共感し、募集ポジションまたはインターンシップにご関心ある方からの応募をお待ちしております。また、リアルテックファンド投資先のスタートアップで働くことに関心ある方もお気軽にお問い合わせください。


▶募集ポジションの詳細はこちら: https://www.realtech.holdings/recruit



 

<プロフィール>


岩元 颯 オリビエ

リアルテックホールディングス株式会社 / リアルテックファンド

アソシエイト


2015年に高校卒業後Jリーグ、ジュビロ磐田に入団。レンタル移籍を挟み3年間Jリーガーとしてプレー。リーグ戦通算44試合出場5得点。

引退後法政大学に入学。素材系ユニコーンベンチャー等での活動を経て2020年よりリアルテックファンドに参画。アソシエイトとして投資・育成、バックオフィス業務と幅広い業務に従事。

投資支援先としては、細胞ファイバ技術を用いた細胞の大量培養ソリューションの開発を行うセルファイバ、ウイルス検査薬および検査機器の開発・販売を行うスディックスバイオテック、カイコ由来タンパク質を用いた経口ワクチンの開発を行うKAICOを担当。



高橋 宏之

リアルテックホールディングス株式会社 / リアルテックファンド

グロース・マネージャー


横浜市立大学大学院修了、博士(理学)。2009年よりリバネスに参画し、民間主導型の40歳以下の研究者向け研究助成「リバネス研究費」の立ち上げや、アカデミアから、ベンチャー、大企業、町工場まで広く知識を集積する学会「超異分野学会」の立ち上げなど、アカデミアの研究成果やアイデアを社会実装する入口を作る活動を仕掛けている。

大学やベンチャーの知財戦略、特許ハイウェイを活用した東南アジアの知財の早期権利化などを仕掛ける株式会社NEST iPLABにも参画し、知財戦略に関わる。

リアルテックファンドでは、グロースマネージャーとしてライフサイエンス領域を担当。

他、株式会社リバネス執行役員、株式会社NEST iPLAB取締役。



柳沢 佑

株式会社セルファイバ

代表取締役社長


東京大学 工学系研究科化学生命工学専攻にて博士号取得。在学中は、相田卓三研究室において、機能性高分子材料の研究を行った。 2018年2月にセルファイバ入社、同年5月に取締役就任、2019年6月より代表取締役就任。入社直後より、AMED・NEDO等の研究プロジェクトで研究代表者を務め、 セルファイバの事業を牽引している。

https://cellfiber.jp/